2018.2.7
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琉球新報 美術月評 2018年1月 黄金忠博 |
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豊かな色彩と力強さ
大平特別支援学校美術展てぃーだのひかり
(1/20~28 浦添市美術館)
会場に入るやいなや、小学1年から高校3年までの児童生徒作品300点あまりの作品が会場を埋め尽くす。鮮やかな色彩にあふれ、その力強さに圧倒された。そしてどの作品も生き生きと輝いている。美術表現の根源を見ているようで、こちらまでワクワクしてくる。 さまざまな技法で作られた作品群とその数、展示方法などを見て、指導教員の指導力の高さを感じた。表現技法の豊富な知識と児童生徒それぞれの個性を見極め一人一人に的確な指導がなされ、児童生徒の個性が十分に発揮された作品群となっている。美術教育の良き在り方が示された展示会であった。
やんばるアートフェステバル
(17年12/9~18年1/21旧塩屋小学校)
沖縄本島北部地域を舞台とした美術展で、旧塩屋小学校をメーン会場として 、海洋博公園、名護市民会館前など複数の会場で展開された。メーン会場となった旧塩屋小学校は、まるで海に浮かぶ船のような場で、眼下には海、背景には森林が広がる。まさに自然の美の中にあるこの場所で現代美術はどう機能するのかと思いながら会場に入った。展示会場に変えられた小学校の教室内をさまざまな作品群で埋め尽くされている。そのうちに現代美術の機能への不安は消えつつあった。ジャーナリスティックに訴えてくる作品もあれば、視覚的に楽しめる作品もあり、バラエティーに富んで見る者を飽きさせない。中でも高木正勝の映像作品「Ymene:1.idu mi」は、見たことのあるようでないようで、曖昧な、しかし実感がある映像表現でその独創的な世界に引き込まれた。このようなアートフェスティバルは一過性のものではなく、その地域に根付いて一緒に発展していくような存在にしてほしい。
沖縄芸術の変遷刻む
彷徨の海・邂逅の海
(17年11/1~18年2/4 県立美術館)
県立美術館開館10周年の記念展であり、「交流」をテーマとして歴史的観点でみた沖縄と台湾の美術動向を紹介する「彷徨の海」と、現代の表現の多様性を中心に据えた「邂逅の海」という2つの形で行われた。戦前から戦後という時間軸の中、台湾、日本との交流の中で沖縄芸術の変遷が見ることができたのは貴重な経験であった。そして「邂逅の海」ではそんな歴史を土台に沖縄の現代美術には何が起こっているのか、どこに向かっているのかといった今現在の沖縄美術の姿が見えてくる。中でもlas barcasの言葉や映像、写真、批評をも含んだジャンルを超えた活動はユニークである。また嘉手苅志朗、石田尚志、照屋勇賢、松本力、ジュン・グェン=ハツシバ、袁廣鳴(ユェン・グァンミン)などによる映像作品が多く見られたのも、表現の多様化となる現代だからこそといえる。県立美術館・博物館が出来たことにより過去から現代までの芸術表現を体系付けて見ることが出来るようになったことは、県民にとって大きな財産になる。今後も芸術運動発信の拠点として、さらなる活動に期待したい。
伝統技術と革新融合
柳悦州退官記念展
(1/12~21 県立芸大芸術資料館)
1986年に沖縄県立芸術大学美術工芸学部に赴任し従事された氏の退官記念展は、織物作家としての一面と鎌倉芳太郎資料研究、ラオスなど国外の織物などの研究者としての一面とが同時に見ることのできる良質な展示会であった。経ずらしによる着物、タペストリー、帯地、着尺等30点あまりの作品は、暗く深い色味が多い。沖縄の暗い色には広がりと深みがあり、それは沖縄の環境が生み出すもので、そこが特徴でもあるという。また工芸デザインについて伝統的な技術を踏まえ高めながらも、型を突き破り革新的に進めていかねばならないという柳氏の言葉に、沖縄工芸への愛情と未来が感じられた。