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2017.8.9
琉球新報 美術月評 2017年7月  黄金忠博

垣根越えた活動期待

New Barrak:open space

(7/15〜17 Barrak) 

 県立芸大卒業生を中心に作られるバラックは、シェアアトリエ、工房、展示スペースを持った複合的な芸術活動施設である。展示スペースには主に平面絵画作品で湯浅要・渡慶次ともみ・徳門あいみ・福田周平・手塚太加丸(映像)の作品が展示されていた。手塚以外は現役の芸大生である。 大学卒業後の活動拠点を確保し、展開していくことは、その後の作家活動にとって重要であろう。社会に出た後、県内で作品を発表する場はそう多くはない。活動の場を自ら作り出していくのも必要なことだろう。今後、一般社会とどうつなげていくかが重要な事柄といえる。美術活動の新たな拠点として一般社会に広く認知され、垣根を越えた広い活動を期待したい。

バラック展示風景.jpgBarrak 展示風景

アナログの良さ実感

「Learn&Play!teamLab Future Park」

(7/15〜9/18県立博物館・美術館)

 デジタル社会のさまざまなな分野のスペシャリストから構成されているチームラボが手がけたアート作品を展示。どれも大型で体感型の作品は、遊園地のような華やかさと楽しさがある。会場いっぱいに映し出される映像の、ある部分に触れることによりその映像が変化、物語が展開していく。まるで動く絵本のようである。数種類用意された魚などの生き物の型紙に、おのおの自由にデザインする。その生物が映像に取り込まれ、映像の海の中を泳ぎ出す。 デジタルとアナログを見事に融合させた作品といえるが、用意された型紙の種類がもっと多いと自由度が増して面白くなりそうである。逆にいえば、アナログな感覚には、デジタルはまだまだ追いついていないと感じた。会場出口に飾られていた、参加者がデザインした魚たちの原画を見ると、人の発想力の多様性が非常に明快に伝わってくる。 デジタルの可能性やテクノロジーの進化には目を見張るものがあるが、アナログの感覚の広さや実感があってこそ、活かされるように思う。 

チームラボ.jpgteamLab Future Parkより

破綻からの再構築を

県立芸大油画Ⅳ 前期報告展

(7/21〜26 県立芸大付属図書・芸術資料館)

 沖縄芸大油画4年による、卒業制作に入る前の個々の取り組みを展示したものである。インスタレーション作品は、 作品自体とコンセプトとに熱量の差を感じた。完成させることに急ぎすぎているように思う。平面作品の方が素材と格闘しながら、湧き出すイメージを導き出していて好感が持てる。 各自の表現の方向性が定まってきていることは悪くはないが、それを超えたある種、破綻したところから格闘しながら表現を積み上げていくという仕事がこの先に待っているように思う。今後卒業制作展でどのように展開していくかが楽しみである。

前期報告展展示風景.jpg県立芸大油画Ⅳより

新たな表現手法展開

石垣克子絵画展−南の景から−

(7/29〜8/6 ギャラリーアトス)

 驚いたのは、展示作品の半分以上が黃色い人やコルク人形といったいつもの石垣のモチーフではなく、目の前に見える自然な風景画作品であったことだ。 目の前にある風景が自分に描かせた、と言っていたように、その風景の何かが石垣の心を引き付けたのだろう。石垣の作品は、黄色い人やコルク人形のように、石垣本人の中にあるファンタジックなビジョンや自身の感覚をキャンバスに視覚化するものであった。だが、今回の風景作品は、具体的な対象が自分の外にあり、それを見て描写するという今までとは違う制作の方向性を感じた。その所為か、絵の具のノリ具合がいつもと違って感じる。何度も塗り重ねられるうちに、絵の具の質が物質的に変化してるように見受けられる。主観と客観とがバランスを取りながら、石垣の新たな表現スタイルが生まれてきているようにも感じる。今後の展開に目が離せない。

石垣克子絵画展より.jpg石垣克子絵画展より

貴重な作品群一堂に

首里城の25年〜平成の復元〜 琉球絵画の世界

(7/7〜9/7首里城黄金御殿特別展示室)

首里城は琉球王朝時代の政治・経済・文化の中心であった。 復元された御書院の床の間に自了や殷元良などの琉球絵師の作品が掲げられていた事を想像すると、さながら美術館のような空間であったであろう。今回の展示は、その想像を現実化した展示と言える。復元されてから25年。戦争によって失われた絵画などの文化財を、県外などの調査により発見し収集してきた。この展示会は初公開の品を含めた、琉球王朝時代の高い文化レベルが知れる良質な展示会である。特に琉球絵画は、ほとんどが残っていないため、これほどまでまとめて見られるのは貴重な経験である。 初公開である毛長禧(佐渡山安健)の「花鳥図 牡丹尾長鳥図」は、陰影を捉えて立体的に描かれているところに中国の花鳥図からの影響がうかがえる。琉球絵画の研究はこれからまだまだ深まっていくであろう。また御後絵などの復元や他作品の修復などから今後新たな発見があるかも知れない。今後の新たな発見や成果が発表されることが楽しみでならない。

「琉球絵画の世界」から花鳥図牡丹尾長鳥図.jpg毛長禧(佐渡山安健)「花鳥図 牡丹尾長鳥図」