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2015.1.7
琉球新報 美術月評 2014年12月

2014年最後の月も様々な美術表現に出会う事が出来た。県では新たな知事が誕生し、新政権がスタートした。このような社会において、美術はどのように機能し、展開していくのだろうか?

枠にとらわれず自由

第25回沖美連展

(12/2~ 7、那覇市民ギャラリー)

第25回沖美連展は 県美術家連盟による平面、立体、陶芸によるグループ展である。この展示会は、沖展やその他美術団体に属しながら、それらの団体展ではできない新しい試みに挑んでいる。まだまだ実験的な要素が強い平面と立体を組み合わせた作品やデザイン作品など、従来の枠にとらわれない自由な表現で目を楽しませた。今回新人3人を含む連盟会員の50点の作品を見る事が出来たが、若い作家の出品が少なく、これをどのように広げていけるかが今後の課題といえる。

沖美連展.jpg沖美連 展示会場風景

精神性を画面に写す

よねだはるひこ展

(12/9~14、県立博物館・美術館県民ギャラリー)

ここ数年毎年個展を開いている、よねだはるひこの作品は、岩絵具などを使った日本画の技法で『雲』を描いている。一見何気ない雲は、「空気」を表現したいという作家の表現のきっかけにすぎない。空気の中にある「精神性」をどう表現するかが作家の求めることであるが、それは現社会の風潮、情勢、思想を表すこととつながる。そして現社会に生きる作家自身の精神性が鏡のように画面に写し出されているのである。

よねだはるひこ.jpgよねだはるひこ展より

思いをストレートに

平良 優季第1回研究展覧会

(12/17~24、県立芸術大学附属図書・芸術資料館 )

沖縄県立芸術大学大学院で美術の博士課程学生として初の研究展覧会である。

 ファンタジックな世界を表現してきた平良の作品群の中で、1点全く異質のように見える作品があった。
 「待ち合わせに聞こえる詩」は、ファンタジックな世界ではなくまさしく現世に生きる作家本人が描かれている。作家自身の思いや悩み等がストレートに画面に現れ、そのリアリティに共鳴する。この作品は作家の今後の制作にとって、展開していく大きなきっかけとなるであろう。



待ち合わせに聞こえる詩.jpg平良 優季 「待ち合わせに聞こえる詩」

工芸の在り方を模索

第4回極東アジア工芸家交流展

(12/17~24、県立芸術大学附属図書・芸術資料館)

漆・ガラス・木工・金工・染織・陶芸といったさまざまなな素材や表現の作品に取り組む韓国、台湾、日本の工芸作家29人による沖縄初開催となるこの展示会は、伝統工芸の枠にとらわれず、新しい工芸の在り方の模索をテーマに活動している極東アジア工芸協議会によるものだ。工業製品では生むことの出来ない、人の手だからこそ出来る形、色、質、そしてその高度な技術によって生み出される美しく新しい工芸の形を見る事が出来た。工芸の未来を見せてくれた良質な展示会であった。

「音」kanghey-ju.jpg「音」 姜 慧柱

感覚的に語り掛ける

上原耕生

(12/4〜14 ARCADE)

「ジュネチック in コザ」(12/4〜14、一番街商店街およびその周辺)は今回で2回目となる。

地元写真家2名・大阪のギャラリスト・沖縄出身の現代美術家・タイの現代美術家の計5名を招聘し一番街商店街周辺の店舗やアートスペース・ギャラリー・商業ビル等を展示会場とすることで、地域を巡るという趣向の展示会。その中でARCADEで展示された上原耕生の作品は、失われていく建築物を記録として映像に残すだけでなく、日中撮影した映像を、夜に透明なスクリーンに投射し、その透明スクリーンを白く塗っていくことで、映像が現れてくる様を見せる作品である。ホワイトペインティングと名付けられたこの作品は、2つの映像が重なり、作家本人が2つの時間帯に存在する。日中の映像に映る作家と夜間に白く塗る作家が呼応し、真っ暗な何も見えない空間の中に、建築物が徐々に姿を現す。失われていくものを再生するかのように浮かび上がらせていく映像表現は、記録を越え、感覚的に見る側に語り掛けてくる。ただ、作家の日中と夜間のコラボレーションの意味合いが曖昧だった事が残念である。



whitepainting 上原耕生.jpg上原耕生 WHITE PAINTING

歴史の変遷表す創造

Time Sharing 隣り合わせの時間 第3期 青野文昭

(12/10- 2015年1/13、沖縄コンテンポラリーアートセンター)

なおす、接合する行為を通じて、イメージと物質の多種多様な関係付けを追求する青野の個展では、拾った車の欠片と廃船のスクラップを中心に段ボールと合体させた作品「なおす・合体・代用・連置 2014」が展示会場めいっぱいに設置されていた。まるで地層深くから古代の遺物が発見されたかの様な、そしてその長い年月を経て、形、質とも変容していく過程が目の前に現れたようなそれは、人為的、または自然に崩壊、欠落したものを再生するために想像を膨らませ合成しながら形作る行為を繰り返し、他の物と混ざり合って元のものとはまた別な新たな存在として生まれ変わる、いわばメタモルフォーゼのように感じた。再生しようとする人為的創造行為が、結果全く別のものに変容させ、新たな未来が創られていく歴史の変遷を表しているかのようだ。そしてこの作品からさらにさまざまな創造がかき立てられ、新しい何かがうまれてくる事を期待するのである。

青野文昭.jpg青野文昭「なおす・合体・代用・連置 2014」