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展示会

琉球新報 2013年12月美術月評(2014年1月8日掲載)                  黄金忠博

2013年最後の月も、様々な美術表現活動が行われ、新たな出会いに恵まれた機会となった。

版表現の領域の広さ

「『版と言葉』展」

「『版と言葉』展」(12/13-23 沖縄県立芸術大学図書芸術資料館)は沖縄県立芸大絵画専攻が主催する国際交流展である。内容、質とも高く、見応えのある展示会であった。版表現の技術もさることながら、版に対しての解釈もテクノロジーの発達により広がって来ている。木版、リトグラフ、シルクスクリーンといった従来の技法に加えて、デジタルプリントでの作品も目についた。また沖縄伝統工芸の型染めの手法を使った作品も並べられており、版表現の領域の広さを改めて感じさせられた。中でもトンチャイ・ユカンタボルンポ(チェンマイ大学教員)の作品と言葉は、美術表現全般に対しての明確な答えと意思の現れとして響くものがあった。
1.「版と言葉」展トンチャイ・ユカンタボルンポ.jpgトンチャイ・ユカンタボルンポ 「言葉」

実と虚が交差する点

「−歓の宙−KAN NO SORA 山城 芽展」(12/21-23、画廊サエラ)

冬至の夜に開催されたこの展示会は、自然界のリズムを作品のステージとしたものだ。冬至、夜が暮れていく中で浮かび上がる生命のうごめきをテーマに、円錐形のスクリーンに、オオゴマダラのさなぎ、成虫と、琉球藍が上から流れてくる様が映し出される。スクリーンの床には円形の鏡が敷かれている。上から下へ流れる琉球藍、またオオゴマダラも上から下へという動きは、床に敷かれている鏡の中に反転し映し出され、スクリーンと鏡の接点部分に吸い込まれていく。実と虚が交差する接点。この世界が実と虚の2つの像によって作られているかのような感覚を得る。琉球藍とオオゴマダラとの関係性が不明瞭であるが、それによって作り出された空間は、心地よく美しく響いた。
2.−歓の宙−山城 芽.jpg「−歓の宙−KAN NO SORA 山城 芽展」より

生活の1コマに美術

「Contemporary Art Show −新都心景−よりSITE 2」(12/11-1/13 Cafe ONE OR EIGHT)

2013年に発足したOkinawa Contemporary Art Center(OCAC)が企画運営したアート・イベント中の1つで、カフェを展示会場としたもの。このような試みは以前からあるが、大画面の作品が多く、近藤麻美の水面の絵画や、佐藤泰壱の平面、岡部賢亮の半立体作品、玉城綾乃の版画作品等見応えある作品群がいつもとは違った空間に変えていた。カフェという空間での展示で、鑑賞を目的としない人たちにも見せる事ができ、何気ない生活の1コマに美術が入り込み、互いに意図しない出会いや発見を生む機会となったであろう。しかし、この環境では作品を見たくとも近くによって見ることが難しい。例えば展示壁面から席を離すなど、展示とカフェ機能を共存させる工夫が欲しかった。
3.SITE2Cafe ONE OR EIGHT差替.jpgSITE 2展示風景

対峙できる展示空間

OCAC企画「SITE 3」(カラオケ シダックス)

 同じく OCAC企画の「SITE 3」(カラオケ シダックス) では仲間桂太と嘉手苅志朗の映像作品2点を上映した。こちらは大型モニターで映像を見る為のスペースとして設けられていた。9月の沖縄学生美術展に出品した仲間桂太の作品「空」は、前回の展示方法より作品にしっかりと対峙できる形となっており、作品意図などが明確に伝えられる展示となっていた。
4.SITE 3カラオケシダックス仲間桂太.jpg仲間桂太「空」

捉え方の差を視覚化

「『IN BOX』嘉手苅志朗 個展」(12/24-27沖縄県立芸術大学彫刻演習室)

 前出のカラオケ・シダックスでも上映されていた、カラオケボックスを舞台としたストーリーのある映像短編作品。ここではストーリー、脚本とも全く同じ映像が2台のモニターに同時に映しだされているが、役者が違っている。「カラオケ」とは各々がその歌手に成りきって歌う、演じる場であると作者は捉え、主人公像の捉え方の差異を視覚化する事がねらいだ。大概の台詞はずれて重なりあいぼやけているが、イメージの共鳴したシーンでは台詞のタイミング、強さ等が一致し、強調される。自己と他者との認識の差異をあらわにしたこの作品は実験的な要素が多く、作品として意図が明確に伝わってこない所が残念だ。更に展開していく余地はあるように思う。
5.「IN BOX」嘉手苅志郎.JPG『IN BOX』嘉手苅志

多様なドローイング

「Draw 3 sksk de つながる展vol.04」(12/6-22、沖縄市中央のsksk)

コザで活動を続ける画家の石垣克子が企画するグループ展で4回目となる。ドローイングは、各々の作家の日常を感じる事ができるもので、それを一つの空間に展示する事でより深いコミュニケーションを図るというコンセプト。17人の出品者のドローイングに対しての解釈は多様で、本画の為のスケッチとして提示した喜屋武千恵、また日記の様な感覚で描き出された与那覇大智、秋元さなえ、水川千春の作品に目を引かれた。映像作家で知られる山城知佳子は、この展示会の為にエッチング作品を制作した。この企画が彼女に絵を描かせるきっかけを与えた。この企画展が作家の制作意欲を刺激して新たな作品が生まれていく場と成っている事を実感出来た良い展示会であった。
6.Draw3skskdeつながる展.jpgつながる展展示風景

 最後に私事であるが2014年4月より那覇造形美術学院は古波蔵に校舎を移転し、ギャラリーを開設する事になった。県内外のアーティストに提供し、県内の芸術活動に少しでも貢献出来ればと思っている。

訂正とお詫び

「Contemporary Art Show −新都心景−よりSITE 2」の、「佐藤泰壱」が「佐藤泰吉」と誤って記載されています。正しくは「佐藤泰壱」です。この場を借りて、訂正しお詫び申し上げます。申し訳ありませんでした。なお、上記のテキストでは修正して掲載しております。 黄金忠博